お菓子を作る人、食べる人を繋ぐ。スイーツプランナー 平田早苗

感覚を言葉で表現すること

テイスティングして、感覚を言葉に変えるのは難しそうですね。

そうですね。「美味しい」「甘い」をどれだけ他の言葉に置き換えられるか。感じたことを言葉で詳細に表現することを日常的に意識しています。

それはテイスティングだけでなく、コンサルティングの時も同じです。どんな言葉を使ったら相手に伝わりやすいのか。相手の気持ちを尊重しながら自分の考えをどう伝えたらいいのか。
自分の感覚をどれだけ詳細に言葉に置き換えられるかでも、仕事の質が変わってくるように感じています

テイスティングコメントについては、慣れやコツも大きいかと思います。フルーティーに感じたら、そのフルーティーさはシトラス系なのかベリー系なのか。ベリーでも、甘みの強いストロベリーなのか、酸味の強いラズベリーなのか、自分の感じた感覚を追って、ぴったりな表現を探っていくと、その風味をうまく伝えられるようになりますよ。

テイスティングコメントってよく、美しい言葉で綴られていますね。

そうなんです。昔、フランスのチョコレートメーカーの社長がコメントしたチョコレートの表現を見て驚いたことがあって。「夏の朝、草原を歩いている時の香り」というフレーズがあり、なんてポエティックなんだろうと。それでいて脳内で確かに香りが再現される。
それに衝撃を受けて感覚を言葉で表現することについて勉強を始めました。

平田さんは研究することに楽しさを感じるのですね。

確かにそういう面があるかも。
「研究」で思い出したのですが、小さい頃、お菓子を作ってはその配合と、仕上がりの自分のコメント、食べてくれた人の感想を書き残し、次はこうしようと全てノートにまとめていたんです。
それを思うと、確かに子どもの頃から研究を楽しむタイプだったんだろうと思います。今も、仕事でなくても、感じた味を言葉にして書いておくことは習慣になっていますから。

お菓子が心を豊かにしてくれる

これからやってみたいことはありますか?

はい。管理栄養士の資格と知識を活かして、糖尿病の方でも美味しく食べられるスイーツや高齢者の方にも安心なスイーツなどを作りたいなと思っています。三度の食事で摂りきれない栄養素を補完するようなスイーツなんかも面白いと思っています。

問題解決への関心と、誰かの役に立ちたいという思いが強いのですね。

そうなんです。もともとお菓子が好きになったきっかけも、母のためにクッキーにアイシングで似顔絵を描き、それをすごく喜んでくれたのが嬉しくて。お菓子って人を笑顔にすることができるんだって強く感じた瞬間です。

今の仕事も、好きなお菓子を通じて、クライアントやそのお菓子を食べるお客様に喜んでもらえるのが何より嬉しいんです。私の場合、自分のブランドを作ることとか、世界観を作ることよりも、誰かの役に立てる方が嬉しいなと思います。

平田さんにとってお菓子はどういう存在ですか?

お菓子は心を豊かにしてくれるものだと思っています。私は大学で栄養学を学んだので、食事の大切さを感じています。「栄養」という視点で見れば、お菓子はなくても生きていけるものですが、あったら人生がより豊かになるもの、心の栄養と思っています。

小さい頃、母の日に手作りのクッキーをプレゼントした時に、とても喜んでくれたのを今もよく覚えています。母の喜ぶ姿が私にとっての喜びであり、当時の喜びが今の仕事につながっています。

お菓子はギフトとして喜ばれ、人と人をつなぐコミュニケーションツールとしても、重要な役割を持っています。

そんなお菓子と関わりながら、作り手の悩みを解決したり、食べる側の希望を形にしたり。お菓子を自分で作る楽しさもあるけど、アイデアを形にすることができる仕事があることを伝えたい。

誰かの役に立っている、そう感じられることが何より嬉しいと感じています。

平田早苗

Sanae Hirata

(株)ポットラックインターナショナル代表取締役。
1998年、洋菓子製造販売の企業に入社。チーズケーキの専門店でチーズケーキの製造・販売、企画開発に携わる。退職後、手作り焼き菓子のショップを5年運営、製造、卸販売等を行う。2004年にチョコレートのテイスティング講座を開講、2005年に起業し、スイーツを中心としたコンサルティング業務をスタート。以来、食とスイーツに関して各種アドバイスや執筆、イベントへの登壇等幅広く活動。現在、十文字学園女子大学 健康栄養学科で「フードマネジメント論」を担当するほか、専門学校やカルチャースクール等での講座も行う。

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