情熱の味。スペイン産オリーブオイルインポーター 加藤智子

自らの情熱に従って、スペイン産オリーブオイルをたった一人、経験もないまま輸入を始めた智子さん。色々な出来事に翻弄されながらも、いつも助けてくれるサポーターが現れるのは、その情熱が引き寄せているのではないかと感じさせる。自分の求める「味」に真摯に向き合いながら、生産者の思いに寄り添いながら、身体にも環境にも優しい味を伝えるひと。

もともと輸入関連の仕事を? 

いえいえ、全然。もともとは飲食業界にいたんです。パティシエや料理人として働いていた頃は、いつか自分のお店を持ちたいと夢見たことも。

とにかくおいしいものが大好きで、流行や業界の有名人にも憧れちゃうようなところもあります。そのおかげで、アンテナがはれて、人や商品の出会いに繋がっていったと思います。

転機があったのはいつ?

27歳のときに、イタリアンシェフをしている今の夫と出会いました。さらっと自然においしいものを作る彼を見て、頑張って作ろうとする自分との違いを感じ、私が料理する必要ないなって思っちゃったんです。 それから彼と結婚し、一旦飲食の仕事は辞めました。

31歳のとき、時間に余裕が持てるようになったので、フラメンコを習い始め、起業にも興味を持ち女性起業塾に通いました。周囲の女性たちにも感化され、まずは起業しよう!と、何をするか決まらないまま、まず先に開業届を出したんです。でも、これからどうしようかな、と思っていました笑。 

そんな時、新婚旅行でスペインへ。スペインを選んだのはフラメンコを本場で見たかったから。衣装やグッズも買い付けて日本でフラメンコショップをやろうかな、と思っていました。事前に現地在住の日本人エージェントもネットで見つけ、買付の準備も万端でスペインへ!ところが、行ったのは8月。スペインはバカンス中で、フラメンコショップはほとんど開いてなかったんです。。。今思えば、それが運命の采配でした。 

そこでオリーブオイルに出会った?

そうなんです。見たいものが全然なくってがっかりしたんですが、開き直ってレストラン巡りなどを楽しんでいました。 そこで出会ったオリーブオイルに衝撃を受けたんです。それまで知っていた味と全然違ってて。青々しくてスパイシー。美しいエメラルドグリーン色のオイル。これがオリーブオイルなの?!って。 

オリーブオイルに詳しいイタリアンシェフの夫ですら、驚く味わい。「日本ではどこで買えますか?」と聞くと、日本にはまだ輸出していないって言うんです。 その時は、こんなオイルがあるんだ!という感動とともに、そのまま日本に帰りました。 

オリーブオイルに恋をした

日本に帰ってから、どうしてもその味が忘れられなくなってしまって。本当、恋に落ちたみたいに毎日考えていました。「この味を知っているのは私だけなんだ、、、」と思うと居ても立ってもいられません。「わたしが輸入しなければ、こんな味があるってことを日本のみんなに伝えられない」と、自分で輸入することを決めたんです。

11月にはひとりでスペインに飛びました。実際に農園を見に行くためです。

オイルを買い付けるのに、実際に農園まで足を運ぶ人は少ないんだそう。そんな行動に好感を持たれ、当時まだなんの実績もない私に独占的に輸出をしてくれることに。最初に購入したのは500mlと250mlのボトル、合わせて600本。貯めていた貯金を使って、その時買える精一杯の本数を購入しました。 それから翌年の1月にネットショップを開きました。今思えば初めての割にはスタートは良かったと思います。