ヘッドドレスとコスチュームジュエリーの世界に生きる。デザイナー・アヤヒララギ。

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ブランドの世界観はどうやって築いていきましたか?

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そうですね、私に影響を与えてきたものが、そのままブランドの世界観になっています。大好きなコスチュームジュエリーの世界。幼少期、父の仕事でドイツに住んでいた頃に身近にあった花や緑、独特なヨーロッパの色。学生時代、旅で歩き見て聞いた素材、空気感。10年近く、旅するようにヨーロッパで過ごしてきた日々。蚤の市や世界中のマーケット、途中一時帰国したときに感じる外から見る日本や文化、そして何より母の存在が大きく影響しています。

ヴィンテージやアンティークといった歴史を感じるもの、世界中のマーケットで見た色使い、職人の手によりこだわって作られた素材。こういった要素がイーラの世界感の根底にあります。良いものを日常的に大切に使い、生活そのものにも華やかさを与えてくれるもの。楽しさ。新しい世界へのワクワク感。

ヘブライ語で「月の周りにかかる光、朧」という意味があるhiila。「職人や世界中の文化、伝統、現在と過去をコラージュ」がコンセプトです。
今も、特に素材や色には強いこだわりがあります。職人の技や想い、歴史が詰まった素材に惹かれてたくさん集めています。パールやテキスタイル、ボタンにビンテージパーツ、何十種類もあって。もう、、、素材コレクターです。

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デザイナーの仕事を辞めたいと思ったことは?

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そりゃありますよ、たくさん!
日本での活動は順調に始まりましたが、いい時もあれば、落ち込む時もあります。時代の変化や、自分自身の環境の変化がやってくると、気持ちがついていけなくなり本気で辞めようかと思う時が何度もありました。
今まで順調に売れていたヘッドドレスの需要が激減したり、結婚し子どもが生まれたことで自由に動けなくなったり。
個人でアクセサリーを簡単にSNSやオンラインで販売する人が増えてきたことも、気持ちが落ち込む原因でした。創作意欲が湧かずに停滞する時期が2、3年続いたんです。それまで制作で扱っていたヘッドドレスのパーツを触ると手が震えてしまうことも。


その時は正直就職も考えて、実際に求人に応募もしました。でも、なかなか決まらなかったおかげで(笑)、結局私にはヘッドドレスとアクセサリーしかないんだ、と再び軌道修正できました。

このコロナ禍では、百貨店に出店できなくなり、子どもたちと本気で向き合う日々を送っています。つかの間専業主婦ですが、これを機会に、せっかく自営業なのだからと、働き方を変えようと思っています。

自分の「好き」を仕事にしたことは幸福感につながっていますか?

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うーーん。正直わからない。好きで好きで幸せなような、苦しくて苦しくて振り向いてもらえないような、片思いのようでしょうか。

まだまだ理想とは程遠い自分だけれども、これしかない、ああ、ここだな、と思うところまで今ずっと最高と思えるところまで諦めずに進んでいくしかないと今は思います。インスピレーションが降りてきて、作っている時は楽しいけれど、全体の仕事の中で制作にかけられる時間って意外と少ないんです。
辞めたいと思うこともたくさんあるけど、結局戻ってきてしまうんですよね。

でもこのコロナ渦のおかげでこんなにも時間ができて、自分が一番どうしたいのかを考えるようになりました。時間の使い方を、家族と人生と自分が楽しいこと気持ちがいいこととでバランスを取るのが一番大事なのだと気づいたんです。そうすると、好きを仕事にする意味がまた新たに見いだせそうな気がします。

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アヤヒララギ

慶応大学卒。セレクトショップ退社後ロンドンのLCFに留学。イタリアのイオセリアーニでアクセサリー作りの現場を経験後、パリで自身のブランドを立ち上げる。帰国後はデイリー仕様のヘアアクセサリー、コスチュームジュエリーから、衣装、ブライダル用の大きなヘッドセット、ヘッドドレスアクセサリー製作まで幅広く製作している

ヘアメイク:橋下ひろみ
写真:鈴木久美子