世界的にもヘッドドレスを専門に作るデザイナーは少ないそう。2008年からヘッドドレスを作り続けているアヤさんは、自身のブランド(イーラ)でヘッドドレスとコスチュームジュエリーを展開している。貴金属などは使わず、ビンテージアイテムや職人のこだわりが詰まった素材をミックスしてボリューミーに仕上げているのがブランドの特徴。「装飾」という言葉がぴったりなこのアイテムは、「さり気ないお洒落」なんて甘いことは言わせない、思いっきりファッションと自己表現を楽しむ人にぴったり。
なぜヘッドドレスを作ろうと思ったのですか?
私、20代前半から8年くらいヨーロッパに住んでいて。アクセサリーとかファッションの勉強に行ったんですけどね。日本に帰国してすぐに、ロンドンの帽子デザイナーが作ったヘッドドレスを見る機会があったんです。友人が結婚式のために作ってもらったっていう。
その時、初めて「ヘッドドレス」というものを身近にはっきりと認識しました。イギリスの留学先にもマリーアントワンネットみたいなヘッドドレスが飾られていたのに、その時はぜっんぜん目に入ってなくて。でも、友人のヘッドドレスは、それはそれはかわいくて。直感的にこれは!と思い、ヨーロッパより持ち帰ったパーツを独学で組み立てたのが始まり。当時プレス兼営業を担ってくれていたエージェントの矢作さんに見せたら「いいね!これでいこう」ってなったんです。
その頃日本には、ヘッドドレスは結婚式で頭につけるティアラのようなものが多くて、羽や植物(アートフラワー)を使ったファッション的なものって少なかったんですよね。
作り始めてすぐに雑誌で使用されたり、芸能人やアーティストがCDジャケットや舞台衣装などで着用してくれたり。当時は卸がメインでしたので、セレクトショップに降ろしたりして、日本での活動は順調に走り出しました。
華やかなアクセサリー、それは。
これはコスチュームジュエリーっていうんです。宝石や貴金属を使わずに、ガラスやイミテーションパールなどを使って作られたもの。素材やデザインに制限がないから、本物の宝石では高価になりすぎて作れないボリュームのあるデザインや斬新なデザインができるのが魅力かな。
「本物よりも輝く」ということからコスチュームジュエリーと呼ばれるようになったとも言われていて、1960年代までアメリカの映画・広告にもたくさん使われていました。より装飾性を楽しむアイテムです
その始まりはココ・シャネル。
「ファインジュエリー(宝石や貴金属で作られたジュエリー)は財産的な意味を持ってしまうが、おしゃれのための美を求めるなら、石や金属の価値ではなく、そのデザイン性にこそ価値がある。」
ーーーココ・シャネル
「コスチュームジュエリーを身に着ける女性は、宝石につられて男性に金で買われることも、騙されることもない自立した女性である。」
1920年代、多くの女性にとってジュエリーは高価で、なかなか手に入れることができないものでした。ココ・シャネルは、ジュエリーを男性から贈られるものとしてだけではなく、女性が自分で自立して選び、ファッションにあわせて楽しむアイテムとしてガラスやイミテーションパールを使った“ビジュ・ファンデジ”コレクションを発表しました。これがコスチュームジュエリーの始まり。
そして、今でもシャネルはコスチュームジュエリーを作り続けています。
社会進出を始めたパリの女性たちに人気になったコスチュームジュエリーですが、社会情勢の悪化に伴って職人がこぞってアメリカに亡命したことから舞台はアメリカに。
ミリアム・ハスケル、トリファリ、スキャパレリ、クリスチャン・ディオールなどのデザイナーが、アメリカの発展とともに爆発的な人気となっていき、1960年代までは女優やセレブリティに愛用されていました。あのジャクリーン・ケネディも気軽に公務に持っていけるジュエリーとして愛用していたのは有名な話なんですよ。