空間に喜びのバイブレーションを生む 画家 及川キーダ

その絵があるだけで空間が華やぐ。
壁一面に大胆に描かれる絵は全体のイメージが決まれば下書きはしないまま絵を描き始めるのだそう!
そんなエネルギッシュな絵を描くキーダさん自身も、そこに居るだけで場が明るくなる華のある女性でした。アートに深い造詣を持ちながらも子どものような純真さを持ち、「今、自分ができること」を追求し続けるキーダさんの活動をお話していただきました。

どんなお仕事をしていますか?

私の仕事は、画家・イラストレーターです。
本や雑誌のイラストレーションを描いたり、プロダクトを作ったり、ホテルやカフェ・レストランなど店舗に壁画を描いたり、イベントでライブペインティングのパフォーマンスをしたり。
もちろん自身の作品も描いて個展を開いたり、フォトグラファーのトシ・オオタさんとの絵と写真のコラボレーション『Mixed』も20周年を迎えたり。様々な活動をしてるイメージに思われますが、基本的には絵を描いているだけです。

これね、なかなか信じてもらえないのですが、、、私は小さい頃、内向的な性格で、あまり人とのコミュニケーションが苦手だったんです。でも絵を描いていると色んな人たちが集まってきて「絵が上手ね~」って。いじめっ子も「すげーな!」って。

また、父によく連れて行ってもらった小料理屋でも、女将さんが小さい子供が退屈だろうと思ってか、色鉛筆やマーカー、画用紙を用意してくれカウンターでよく絵を描いていました。
自分からは話しかけないような大人達からも「おっ、上手だね~!」なんて言われたりして。

子供ながらに「絵を描くと皆に喜んでもらえる」って思ったらしく、2歳くらいから絵描きになると決めていたらしいです。。笑
周囲の褒め方も相当上手だったんでしょうね。

絵を描く中では、色々と「コツ」がわかる段階があるんです。
例えば、学生時代であれば大学入試で求められる絵だったり、現在なら仕事や様々なシーンで求められる絵。それぞれ、その場所で要求されるものが違います。それに対して「こうでしょう?」と描いて見せてあげると、「そうそう!」「ですよね。」. . . お互いのイメージがガッチリ合う。
感覚的ですが、「こうやって描けばいい、これを描けばいい」とコツがわかる瞬間がある。

絵とも対話し、絵がコミュニケートのツールにもなる。絵が私と人を繋げてくれている気がします。

求められるものに応えられるようになるコツとは?

例えば学生時代、まだ右も左もわからない年頃に、考えこんだりするだけでなく、絵を描く状況とは全く関係のない時間に「優れている」とされる先人の音楽や映画、アート等いろんな芸術や作品を見に行くことが「下地」としてあったから「コツ」がわかるようになったのかなと思います。

諸先輩に「これもいいよ」と言われたものもまた体験しに行ったり。先人の、その方々の時代の人生を歩むことはできないけれど、「作品=人生」を垣間みることによって、その一部を自分の経験として吸収させてもらえる気がします。

他にも、素晴らしい作品を観た時には、「自分だったらどうするかな?」と考えたり。「自分だったら、どれくらいの人に、いいね!と思ってもらえるものが作れるのか?」と、模索します。

若い時は特に、自分が思うよりも技術が拙くて、表現が足りないこともあったけれど、それでも完成イメージはレベルをある程度高く上げておかないと、その半分に届かないものも作れないですよね。

だから、例え自分にはまだ難題だとしても、いつも高い位置にイメージを置いておくと、少しづつそこに近づいていくことができる気がします。そうやって頭の中にたくさんのイメージやアイデアがベースにあり、(無意識ですが)仕事の打ち合わせ中にパッと思いつくものが、「いいね!」と思われたり、「だよね!」共感してもらえる。

“富士山みはらし” 富士山5合目ロッジ壁画  
photo: Toshi.OTA

例えば、イラストの仕事や、お店の内装などを相談されたとき等も、「ここにこんな絵描いたらいいんじゃない?」「もう少しこういう絵にしたら空間を活かした感じになりそう」という風に。

今でも自分の中で「レベルを上げていかないと」と思い続けています。世界を大きく眺めて、どんなものが必要とされているんだろうと模索したり。また、先人達だけじゃなく、今の若い人たちの素晴らしい感覚など、もう一度見直したらいんじゃないかと。そういう意識もアイデアが思いつく「コツ」なんじゃないかな。サボりぐせもありますけどね笑。

“富士山みはらし” 富士山5合目ロッジ壁画  
photo: Toshi.OTA