他の人や作品から影響されることはありますか?
あるでしょうね。でも真似にならないように気をつけています。
デッサンや練習のための模写などは若いうちにやり尽くそうと思ってたくさんしました。うちの父から「模倣の10年、それを忘れるのに10年」と言われたことがあって、「確かに!」と納得したんですよね。
真似をすることでテクニカルな部分やセンスを吸収して自分の一部にできるのではないかと思っています。その模倣を忘れ、自分のオリジナルにするにはどうしたらいいんだろうかと試行錯誤するのに10年、15年とかかっていくのでしょう。
でも長く描いていると、今度は「自分の真似」も出てくるんですよ。あの時のあの絵を描いてください、と言われたり。そんな時は「えー、自分をコピーするのか」って気持ちになります笑。経験としてやってみると、また面白いんですが。
技術が上達した絵と、若い時のエネルギーで描かれた絵はまた違うので、過去の作品と対峙しながら自分と戦っています。
でもそんなことより、一番よく考えるているのは、
「たった今、ここにいる自分が何ができるだろうか。どんな感覚で世の中に発信していこうか。今、何をやったらみんなは元気になれるだろうか?」
ということ。
今しかできない、自分にしかできないのがオリジナル。100年前に生きていた人は今、この状況下で何かを創ることはできませんから。
真似にならないようにする、というよりも、今この瞬間にしかできないようなことを一生懸命考えるんです。模索、模索、模索、、。もう、いつも必死です。
キーダさんのライブ・ペインティングはどんなスタイル?
音楽が大好きなので、普段から音楽を聴きながら絵を描いていますが、イベント等でのライヴ・ペインティングでは、音楽に合わせて人前で絵を描きます。音楽がBGM的に流れる中で淡々と描くのではなく、音とリズムと一体となって描く事を目指していて、一つのパフォーマンスとして、見ている人にも楽しんでもらうことを意識しています。
よく、普通に描くのとライヴ・ペインティングの違いを聞かれたりしますが、観客がいて、瞬間にバババーっと描きあげ「おもしろい!」って感じてもらえる感覚も私には向いているみたい。「どうしてこういう絵を描いたかなあ」と後で思うくらい、その瞬間にしかわからない色や形があるのも面白いんです。
あ、精密な絵も描けるんですよ。「絵が上手いんですね!」って時々驚かれます笑。でも見たものをそのまま綺麗に描くのは、今の自分にとってはあまり興味がなく、そういうのは今はとりあえずいいかなって。
ただ、基礎的な絵の技術がベースにあることで、その時のグルーヴで好き勝手やっても最終的に全体をまとめることができるのかなあと思います。ライブペイントの中では、時には絵の具をキャンバスに向かって投げちゃったり、偶然性を利用したタッチもあるんですが、混沌とした抽象的な絵だけでは終わらないようにしたり。
デッサンなど、若い時にちゃんと絵のトレーニングしておいてよかったと思います。骨学とか筋学なども学びました。だから人の体をデフォルメして描いても、なんとか自分の意図に反して不自然になったりはしないのかなと思います。
これまでどんなところでライブ・ペインティングをしましたか?
中でも印象に残っているパフォーマンスは、EU JAPANフェストの文化都市にフランス・マルセイユが指定された年に、現地で行われたイベントに招聘していただき、マルセイユバレエ 団のダンサー3人とライブペイントをしたこと。
ダンサーが踊る中、衣装やオブジェに絵を描くんです。お話が来た際、面白そうな企画にすぐ応諾したのですが、踊っているダンサーにペイントするためには私も同じように動かないといけないことにリハーサル途中で気づき、慌てました笑。それからわたしもダンサーと一緒に一週間コンセルバトワールに通い、場当たりや振り付けを覚えさせていただきました。
小さい頃からバレエを習っていたのがここで活きました。当時のバレエのレッスンはこのためだったのかと笑。本当無駄なことってないんですね!
実際のイベントでは、振り付けやダンサーの動きに合わせ、ダンサーが美しく見えるのを邪魔しないようにに歩き、ここぞ!というときには思いっきり全身を使って描き上げました。見ている人が楽しめるように「自分をどう見せるか」を意識するようにしています。
ほかにも、色々なブランドのレセプションパーティーやディナーショーで音楽家の方々等と一緒に即興で絵を描いています。
ライヴが始まる前には、落ち着いた曲だと聞いていても、実際始まるとミュージシャンがわたしの絵をみて面白がってなのか? 即興で意外な音を出してくるので、こちらもその音に呼応して表現する様に心がけています。
予定調和はおもしろくないので、最終的な着地点のイメージだけを粗方決めておいて、その他は瞬間瞬間の自分の判断に任せています。
時には、「どうしよう、あと数分で描き上げられるか、、」と自分の中で緊張が走る時があるのですが、観ているお客さんはその緊張感を楽しんでいる様ですね。だから「どうしよう~!」のままでいいのかなと思っています。
その場にいる人たち全員がドキドキワクワクして、そのバイブレーションと一体になって絵を作り上げている。内側から湧き上がる「そこでしか感じられない楽しさや喜び」をわたしも味わっています。
プレッシャー?緊張はありますが、プレッシャーを感じることはあまりありません。私、絵にだけは多少自信があるのか、絵を描くのであれば「私にできるかな、、」というような不安はあまり感じないようです。