情熱の味。スペイン産オリーブオイルインポーター 加藤智子

すぐに売れ始めた秘訣は

ブログですね。起業塾に通っていた時、自分のブログを書くことが必須だったので、卒業後もそのまま日常的にブログを書き続けていたんです。 

スペインに行ったこと、すごいオリーブオイルに出会ったこと、悩んだ末に自分で輸入を決めたこと、農園に行って生産者と会ったこと。自分の経験、驚き、感動、わくわく感を全てそのままブログに書いていたんです。それを読んで「入荷したら買いますね!」と言ってくれる読者の方が結構いたんです。

卸売したいという小売店からの問い合わせも何件もありました。これまで経理や事務的な経験が全くなかったので、右往左往しながら、実践で学んでいった感じです。

やっと追加でオイルの注文もできる!、そんな時でした。忘れもしない2011年4月。震災の翌月に想像もつかない出来事が起こったんです。

オリーブオイルをめぐって起こったこと

ある会社から一本の電話がかかってきて、こう言われたんです。

「同じオリーブオイルを売ることになりました。一緒に販売を手伝ってくれませんか?」

「???」

 最初は何を言っているのか全くわかりませんでした。どうやら別のインポーターを通して同じオリーブオイルを1万本を買い付けたんだとか。悔しいけれど、わたしはまだその量を買う体力はありませんでした。 

ひとりで起業し、ひとりで始めた輸入。こんな時、相手の会社とどう話し合ったらいいのか全くわかりません。裏切られたような気持ちになって、SNSで「悔しい、、、」とこぼしてしまいました。それを見たかつての上司が連絡をくれ、相談に乗ってくれることに。 一緒に売るという選択肢は私の中には全くなかったので、「別のオイルを探せるなら、今は諦 めたほうがいい。」というアドバイスに納得し、身を引くことに。

「わたしはこのオイルから手を引き、違うものを探します」とお断りしました。

当時はとても悔しかったのですが、一番最初にこのオイルのお客さんになってくれた著名なシェフが「加藤さんは大手に目を付けられるほどのものを見つけて、一人で引っ張ってきたんだ。大したもんだよ。」と言ってくれたんです。目から鱗でした。

周囲のサポートのおかげで先方と落ち着いて話ができたことで気持ちも落ち着き、今ではその会社の方と会ってもお互い挨拶できるくらいさっぱりしているんです。

人との縁が繋いだ希少なオリーブオイル

2011年はずっと新しいオイルを探していました。スペインのありとあらゆるオイルを味見した のですが、自分にヒットするものが見つかりません。どれも美味しいけれど、なかなか「これ!」とは決めきれない。いいなと思うものがあってもミニマムロットが多すぎて買えなかったり。スペインのある州政府の方も「ともこさんなら」と紹介してくれたオイルがあったのですが、「売れる」とわかっていても自分のなかでしっくりこず、それに決めることはできませんでした。 

わたしは現在、「スペインワインと食協会」を同じスペイン好きの仲間、郁美さんと運営しているのですが、わたしが次のオリーブオイルを探すのを諦め始めた頃、彼女はスペインにあるワイナリーの当主と結婚し、スペインに移り住んでいました。

「新しい生活はどう?」そんな話をしていた時、オリーブオイルの話がでました。 郁美さんが住んでいるのは人口300人ほどの山の中の小さな村。近くにコンビニやスーパーな んてありません。人々は自分たちの村で収穫したオリーブを共同の搾油所でオイルにし、毎日どんな料理にも使っていました。

揚げ物も、サラダも、パンに塗るのも。マヨネーズもオリーブオイルで作った自家製のもの。郁美さんもそれに合わせて朝から晩までオリーブオイルを口にしていたら、肌や体の調子がいいんだとか。「ともこさんも試してみる?」とオイルを送ってくれたんです。 

味わってみると、求めていた味とは間逆な優しい味わい。わたしの探しているものとは違うかな、、と伝えると、郁美さんは「現地の人がリアルに使うものはこういう味わいなんですよ〜。スパイシーなものもアクセントとしていいけれど」と教えてくれました。

[ 郁美さんとグリフォイ・デクララのみなさん ]

オリーブオイルの味を紹介するだけでなく、私は「オリーブオイルがある生活」そのものも広めたいとも考えていたので、確かに毎日使うなら、、、と気持ちが変わりました。それに、スパイシーな味わいのオイルで失敗したから、今度は間逆なものもいいかもしれない、と思ったんです。 

そうして2013年、最初の入荷は120本。たとえ売れなかったとしても自分で使えばいいかなと思ったんです。でも、そうやって毎日使っていたら、飽きない美味しさがわかってきて。まんまとわたしがハマってしまいました。いまではなくてはならない存在に。そのオイルは「カミロケ」という名前でした。現在うちで販売しているグリフォイオイルの前身です。