全てが女性スタッフだからこそ
ースタッフみなさんとは思いが共有されているのですね。自分以外の人と思いを同じにするようなコツはあるのですか?
そうですね。段々と想いを共有できるようになってきたんだと思います。
まずはスタッフのみんなが働きやすい環境を整えて、その人の個性や特性を活かせるように考えます。その上で、一緒に仕事をしていくことで、私の思いが伝わっているんじゃないかと。
うちは、女性スタッフばかりですし、お子さんがいらっしゃる方は職場に連れて来ることもあるんですよ。子ども達がきた時には、利用者さんと一緒に遊びに参加してもらったり、時にはレクリエーションを仕切ってもらったり。子どもとおじいちゃん・おばあちゃんは相性がいいので、私たちにとっても子どもたちは有難い存在。それに、いつかこの事業所を継ぎたいと言ってくれる子が出てくるんじゃないかと期待もしています笑。
ーレクリエーションの企画は誰がしていますか?
最近はスタッフさんに全てお任せしてます。こんなに楽しいデイサービスは他にないと自負するほど、みんなレクリエーションにはいつも頭を使っているんですよ笑。
季節のイベント的なものだと、運動会やバーベキューをしたり特大恵方巻きをみんなで巻いたり。これが、結構盛り上がるんです。
運動会は座ったままでもできる競技を考えて、誰でも参加できるようにしますし、バーベキューは皆さん昔を懐かしんで意外と楽しんでくれるんです。
若い頃に調理の仕事をしていた人は、バーベキューが始まると途端に元気になって食材の下ごしらえを手伝ってくれたり。「あれ、さっきまで腰が痛いって言ってたのにね~」ってみんなが驚くほど。自分ができることがあると、みなさんイキイキとしています。「家族とよくやったね」と思い出話に花が咲いたり、童心に返って楽しんでいる姿を見られるのはやりがいを感じる最高の瞬間です。
ーめぐみさん自身も現場で働いているんですか?
もちろんです。朝から一緒に過ごして、午後は一緒にお昼寝したり、たくさんお話ししたりするのは私の喜びでもあります。おじいちゃんおばあちゃんが本当に愛おしいんですよね。「ああ、このしわはいつ入ったんだろう」「どんな人生を送ってきたんだろう」と思いを巡らすことも楽しいですし、私の話しで笑ってくれると最高に嬉しいですね。
うちに来てくれる利用者さんは、まだまだ自分で動ける状態なんですが、病状が悪化したり、容態が悪くなって動けなくなった時には別の場所に移ってケアを受けることになります。なので、ここは利用者さんの残された人生の中でも、自分で動けて人との関わりを楽しめる貴重な時間でもあると思っています。
いつ容体が悪くなってもおかしくない中で、利用者さんが活動する姿からは命の輝きをいつも感じています。それがとても愛おしくもあり、1日1日1分1秒を大事に傍に寄り添いたいと思うんです。認知症の方は特に、1番ご活躍されていた時代に戻られることが多いので、一緒にお話ししていると人間の脳の不思議さを感じられて興味深くもあります。
「忘れる」ことで生きていける
ー認知症の方とのコミュニケーションは難しくないですか?
そうですね。難しくもありますが、会話を深め、相手を知っていく喜びはまた違った味わいがあります。認知症の方は、もの忘れや幻覚・幻聴の症状があるんですが、聞くたびに年齢も変わるんです。本当は70歳なのに、朝「〇〇さんは何歳?」と聞いた時には50代で、午後また年齢を聞いて見ると60代になっていたり。1日に何度も年齢が行き来します。
ご本人の脳の中では、本当にその年齢になっていますから、年齢が変わると話し方など雰囲気も全然違うんです。不思議ですよね。だいたい人生で一番良かった年齢に戻ることが多いように感じます。でも、脳と身体の年齢が合ってないと、思うように動けずに苛立ちを感じたり、気持ちが不安定になって他の人にきつく当たってしまう場合があるので注意が必要です。
その時の脳内での年齢に合わせてお話をすると、だいぶコミュニケーションは取りやすくなります。幻覚や幻聴も、ご本人にとってはリアルなものですから、おっしゃっていることを否定することはしませんし、同調し、受け止めています
年齢が変わったり、「忘れる」ことにもちゃんと意味があるんですよ。忘れなければ生きていけない程、辛いと感じる経験をしていることが多いんです。わかりやすい例では、仲の良い夫婦だった方が、パートナーを亡くしてしまったのを機に記憶が飛び始めるなど。苦しみや痛みに繋がる記憶を忘れる事でようやく生きてこられたんです。
認知症の方と沢山お話をしていると、「あ、この時期から記憶が曖昧だな」と分かる時もあって。ポロリポロリと辛い思い出が語られる時には、胸が締め付けられることもあります。でも、そこを理解して接していくと、皆さん心がとても穏やかになります。話すことってすごく大事なことですよね。