女性を描き続けていく。絵を描く人 ハラダエリコ

強さと繊細さを併せ持った印象のハラダエリコさん。高校卒業後、グラフィックデザインを学ぶ為に渡米するも、デッサンの授業の中で「絵を描く方が楽しい」と感じ、NYファッション工科大学のイラストレーション科に編入。それ以来、自分の思うままに絵を描く時間が何より自分にとって必要な時間であるそう。「自己表現って何だろう」そんなことに迷った時、彼女の絵に対する姿勢は一つの答えになるのでしょうか。

絵描き5年目の今。

独立し、絵を描く仕事をして5年目になります。女性や猫を線画で描いてイラストにすることが多いのですが、他にも店舗の内装の一部に壁画を描いたり、自分の書いたタイポグラフィーを使って空間演出の一部やお店のロゴとして使われたり。人物や動物の似顔絵を描いてその収益を寄付したり、という活動もしています。
ニューヨークで絵を学び、日本に帰ってきてからは社会勉強も兼ねて秘書や通訳の仕事などいろいろしましたが、古美術商で腰を据えて6年働き、それから絵描きとして独立しました。わたしはイラストレーターとして営業活動や売り込みなどはあまりしていない方ですが、周囲の人のご縁から仕事が徐々に増えていきました。

一粒万倍グラノーラで使われたイラストたち。

独立して間もない頃、一粒万倍グラノーラというグラノーラ屋さんの壁画を描いたり、イラストが商品やノベルティに使われたことがあって。自分の描いた絵が目の前に広がり、お客さんが見て反応してくれる、初めて自分の描いた絵が現実の世界の一部になって、とても嬉しくて感動しました。

最近では西荻窪のコッポドヂーア(copo do dia)というブラジル・ポルトガル料理のお店のロゴやイラスト、店内を飾る抽象画を描かせてもらい、空間を彩る仕事の楽しさも感じます。

「女性を描きたい」という衝動

女性を描くのが好きですね。仕事も女性のイラストを依頼されることが増えてきました。女性の柔らかなフォルムの美しさ、喜怒哀楽のある表情に魅力を感じているんだと思います。
強気な表情や、何か企んでいるような、斜に構えてこちらを見つめてくる目に魅力を感じますし、伏し目がちな目元に落ちるまつげの影や、瞬間瞬間に見える表情の美しさを留めておきたい気持ちが湧きます。

そして、女性を通して自分の中の感情や思いをメッセージとして表現している部分もあります。イラストを描く際、最初の作業が女性にキャラクラーを設定をすることがなんです。伝えたいメッセージを表現するのにぴったりな女性像を自分の中に設定して資料を探し全体の雰囲気を決めていきます。

でも、受けとるメッセージは見る人の自由だと思っています。その絵を見て、「昨日の私みたい」「こんな女性になりたい」「あ、この感情私も知ってる」と自由に感じてもらえたら嬉しい。自分の描いた絵がどんな風に感じらているのかを聞くのってすごく面白いんです。

絵のモデルとしてよく登場するのはブリジッド・バルドー。とても大好きな女性なんです。彼女の強気な目や生意気そうな表情がとても好き。芯が強くて自分の意見を持っている女性が好きなんでしょうね。

思い通りの線を引くために。

私は、女性にしても、動物にしても、黒い線で描くことがほとんど。竹のペンで一発描きなので、失敗したら何度でも描き直すんですが、「この線!」とバチッと描ける時があってその瞬間が喜びなんです。思った以上の線が描ける時もあって、いつもその瞬間を期待しています。

ニューヨーク時代に学校の先生から毎日描きなさいと言われていたことをよく思い出すんです。「筋トレと同じことだよ」と。今ならよく理解できます。毎日手を動かすことで、自分の筋肉を繊細に動かせるようになる。そうやって頭の中に描かれる理想の線が描ける頻度が上がってくる。昔は才能が全てだと思っていたんですが、そうじゃなかったです。